南米・ペルーごはん日記 vol.03【南米最大の食の祭典「Misturaごはん」】

2011年10月16日 category:

第2回東京ごはん映画祭 特別上映作品ペルーの食映画『Cooking Up Dreams』ラテン系サポーター、ペルー現地にいるFood Lovers・仲宗根ゆうこさんのペルーごはん日記です。

日本の裏側・南米ペルー。
映画『Cooking Up Dreams』にも描かれていますが、食文化が多彩で豊かな国。
ラテンなノリで、食べることが大好きなペルーの人々の日常をちょこっとのぞいてみたいと思います。

今回vol.3は、映画のラストにも登場する南米最大の食の祭典『Mistura』についてです!

(映画『Cooking Up Dreams』に登場するのは、記念すべき第1回Misturaです。)

—————————————————

【南米最大の食の祭典 「Misturaごはん」】

ペルー人のお腹はポッコリしている。老いも若きも、ボニート(イケメン)、ボニータ(美女)も、やけにお腹がポッコリ。

ペルーに住み始めた頃、街を行き交うポッコリ腹にクギづけだったっけ。これはDNAの仕業でもあるんだろうけど、大きな要因はよく食べるからに違いない。

ホント、食いしん坊民族なんだから。

そんな彼らが心待ちにしているのが、映画『Cooking Up Dreams』でも取材された、南米最大の食の祭典“Misturaミストゥーラ”。毎年9月にリマで行われ今年で4回目。ペルー全土から、海外から40万人が訪れた。リマの人口が900万人。10日間の催しでその数字をたたき出すのは、驚異的なこと!だそうだ。

 

“Mistura”は、ペルー各地(海、山、ジャングル)の選りすぐりの食べ物が集結するフードショー。ご当地自慢の伝統料理や“ラテン・ヌーボー”とアメリカ、ヨーロッパで注目を集める洗練されたペルー料理が味わえ、巨大生鮮市場には、ジャングルからペルー人でも知らない亜熱帯フルーツや、山岳地方からはアンデス産の穀物や色とりどりのイモ類などが届けられる。まさにペルーの胃袋ここにあり!ペルーを丸ごと味わえる満悦至極のおいしいフィエスタ(お祭り)。

これまでのペルーは正直言って、「世界に誇る素晴らしい素材があるのに、商売ベタ」という印象。ワインを生産するもチリやアルゼンチンに一歩も二歩もリードされ、世界一の称号を持つコーヒー豆、ヨーロッパの有名チョコレートブランドが買い付けに来るカカオ、医薬品メーカーおかかえ植物ハンターがしのぎを削って探すアマゾン奥地の薬草も、世界的知名度は低い。「またいいとこどりされた!」と、数々の辛酸を嘗めつくしたであろう。

勝手に身内と思っている私は、残念でしょうがなかった。

でも!この“Mistura”は“ラテン・ヌーボー”ブームに火をつけたペルー人シェフ、ガストン・アクリオ氏を中心にペルー料理界が世界に挑む食の祭典なのだ。

ペルー市長も「ペルー独立200周年の2021年には、世界中が認める南米最大の美食の都にする。」と、その鼻息は荒い。会場のセキュリティも、クリーンも先進国水準。これってもはや国策?と思えるほど。

「本気だ!本気だ!今度こそ本気だぞ!」と、私もワクワクしている。

 

そして迎えた“Mistura”。平日にも関わらず、開場寸前の入場ゲートには黒山の人だかり。お腹をへらし今日にかける老若男女がチケットを握りしめて待ち構えている。大きな買い物かご持参のラテンおばちゃん軍団、カップル、親子連れ、そして車いすや杖をついた老人も、今か今かと意気込んでいる。いざゲートがオープンすると、お目当ての味処へ猪突猛進。その様には圧倒されるが、すがすがしくもある。

目を引いたのが、もくもくと上がる煙を目印にたどり着いたチャンチョ・デ・パロ。豚の脇腹肉を数頭、巨大な鉄の網焼き器に挟んで、ルクマという木の薪でじっくり焼いた焼豚。なんともダイナミック。リマ郊外ワラルの名物料理。ここがその日一番の行列だった。

また、映画にも登場する山岳地方が起源のパチャマンカも目を喜ばすアース・オーブンの料理。土を掘った穴に焼き石、バナナの葉で包んだトウモロコシ、イモ類、肉類を放り込んで土をかぶせ、蒸し焼きにする。

デザート部門では、南部アヤクーチョ名物胡麻アイスの実演を楽しんだ。氷の上に牛乳と胡麻シロップが入った鍋をのせ、かき混ぜてアイスクーム状にするというもの。

パナデリア(パン屋)ブースでは、ペルー全土から集まった熟練のパン職人達が、産地名物のパンを毎日50種類焼きあげる。限定“Mistura”バッグに入ったクスコの大きなパン、パンチュータ入りセットは大人気だった。

 

ここペルーでは、“美味しい”も、“美味しそう”も、 “¡Qué rico!ケ・リコー”という。お目当ての品をほおばる食いしん坊たちの顔は幸せを連鎖させ、会場中で“ケ・リコー!!”がこだましているかのような一日だった。

 

数日後、リマからバスで1時間、太平洋を臨む海岸近くのパチャカマックという遺跡を訪れた。

紀元600年ごろからスペイン人の侵略に合う1532年まで、永きにわたり創造の神とあがめられ魚をご神体として、各地からの巡礼者が絶えなかった聖なる地。

ここで2004年に発掘作業を行ったという食いしん坊考古学者松本剛さんの説明によると、遺跡からたくさんの貝殻や杖が発見されたという。

「杖をついた老人も拝みに来てたらしいよ。巡礼者達は、ここでうまい魚介を喰ってたんじゃないかな〜?」食いしん坊考古学者はチッと、いにしえの食いしん坊たちに舌打ちした。

確かに、盗掘がさかんな時代に掘り起こされた土の小山があちらこちらに点在し、たくさんの貝殻がむき出しになっている。

各地から聖地をめざしやって来て、聖地で食べることを最大の楽しみとしていたのかもしれない。ここってもしや先史時代の“Miatura”!?と、勝手に結びつけてほくそ笑む。

遥か悠久の時代に思いを馳せながら、聖地巡礼と“Miatura”を重ね合わせると遺跡も“Miatura”もがぜんおもしろく見えてくる。ビバ・ペルー!!(ペルー・バンザイ)

 

先史時代も、ポッコリ腹だったであろうペルー人には、ダイエットをお勧めしたいけれど、無理なダイエットに精を出す日本の若い女性たちには、大きなお世話ながら、彼らの食べることの喜びを伝染させたいと思う今日この頃。

ペルーに来て1年6ヶ月。ペルー人にあやかり、気がつけば ポッコリ腹の堂々たる仲間入りを果たしたことは否めない。

ルクマ  ペルーでポピュラーな果物
アヒ(唐辛子)
イキートス 干した魚

オユーコ

エモリエンテ(薬草、果物、大麦などで作る飲み物)、好みでいろんなシロップを混ぜる


日本の牛丼も!!

マサ・モラ・モラード(紫トウモロコシ)とアロス・コン・レチェ(牛乳ごはん)のデザート


Peruより。文:仲宗根ゆうこ Yuko Nakasone  
写真:Grupo cinco de Ferreñafe

ペルーごはん日記vol.4へ、つづく。

vol.2へ

————————————————

■映画『Cooking Up Dreams

ペルーの食文化を愛する人々と、その食の原点を探っていく。
「世界へ向けて、食で国(ペルー)を元気にしていく!」という希望あふれる姿が描かれている。また、ペルーは地震国で、2007年ピスコ地震後に一丸となったシェフたちの姿に、3.11東日本大震災後の私たち日本人も共感の念を抱き、元気をもたらしてくれるはず。
また、ペルーの食文化の奥深さと可能性も見逃せない。じゃがいも、トマト、唐辛子の起源といわれるペルー・アンデス一帯。世界の食のルーツがここにある。山、海、川、ジャングル、様々な気候風土を持ち、移民も多いペルーは食材も食文化も多種多様!おいしいペルー料理は、欧米でも大人気である。
■上映スケジュールはコチラ

■大人気のペルーごはんつき上映回
10/21(金)が追加になりました!